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病気についてパニック障害

1980年にアメリカ精神医学会の精神障害分類であるDSMIIIに初めて登場し、WHOの疾病分類であるICD10に登場したのは、1992年と比較的新しい疾患概念です。まだ正しい知識が医療関係者の間でも普及していないのが現状です。

病因

脳幹部の橋の青班核という部位からノルアドレナリンが過剰に分泌され、パニック発作が生じてくると推測されています。ストレスが誘因となることもありますが、何の誘因もなく発症に至ることのほうが多いようです。心因性の病気というより、体質に由来する病気と考えたほうがいいかもしれません。

誤警報仮説

パニック発作は、身体の警報装置が緊急時でもないのに誤って作動してしまって、身体全体に非常事態宣言が出されてしまったような状態です。
誰でも、戦争や大地震に巻き込まれれば、パニック状態に陥りますが、何も起きていないのにこういったパニック状態に発作的に襲われるのがパニック発作なのです。

パニック発作(DSMIVの診断基準)

強い恐怖または不快を感じる発作で、以下の症状のうち4つ以上が突然に発現。10分以内にその頂点に達し、1時間以内に消失してしまう。死への恐怖や発狂の恐怖を伴うことが多い。

  • 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
  • 発汗
  • 身震いまたは震え
  • 息切れ感または息苦しさ
  • 窒息感
  • 胸痛または胸部不快感
  • 嘔気または腹部の不快感
  • めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
  • 現実感消失、または離人症状
  • コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
  • 死ぬことに対する恐怖
  • 異常感覚(感覚麻痺またはうずき感)
  • 冷感または熱感

パニック障害の進展

ステージ01
何の前触れもなく突然パニック発作が出現。今にも死んでしまいそうな恐怖感におそわれます。救急車を呼んで病院を受診しますが病院到着時には、発作はおさまってしまってます。
検査でも異常がみられず、「単なる過労でしょう」と家に帰されます。
ステージ02
過労だったのかなと思い、普段どおりの生活に戻りますが、数日後、再び死の恐怖を伴ったパニック発作に襲われます。再び、救急車で病院受診しますが異常は見つかりません。
ステージ03
こういったパニック発作がたびたび繰り返されるうちに、また発作が起きるのではないかという不安にビクビク怯えながら暮らすようになります。この不安を予期不安といいます。
繰り返すパニック発作とこの予期不安があって初めて、パニック障害と診断できるのです。
ステージ04
予期不安が強くなっていくと、パニック発作が起きるのが非常に怖いため、一人で外出できないという状況になります。また不安を感じる場所に行くことも回避するようになります。特急電車、飛行機の中、渋滞の高速道路のような動きのとれない状況は苦手なので、こういった状況も回避するようになります。
この状態を広場恐怖といいますが、広場恐怖がみられる場合、パニック障害はかなり進んでいる可能性があります。
ステージ05
広場恐怖の状態が続くと、どこにも出かけられない、引きこもりの悶々とした日々を過ごすようになり、二次的抑うつの状態になります。
またパニック障害とうつ病は病態生理的にはとても近い疾患なので、パニック障害が長引くと、本当のうつ病を合併してしまうことが多いようです。
  • パニック発作の頻発
  • 予期不安
  • 広場恐怖
  • うつ

疫学

10~30代の若い女性に多い病気です。
100人中3人くらいの人が一生のうち1度はかかる病気といわれており、決して珍しい病気ではありません。なりやすい性格傾向は、几帳面、まじめ、神経質というようにうつ病の病前性格と共通しています。

鑑別診断

甲状腺機能亢進症、心疾患。
症状がとても似ており注意が必要です。

治療

01まずパニック発作を完全にコントロールする。

発作のコントロールには、薬物療法が不可欠です。
SSRI系抗うつ薬を十分量服用することで、発作は95パーセントのケースで完全にコントロールできます。
発作のコントロールが不完全だと予期不安の改善はみられません。抗不安薬を発作時のみに服用しているだけでは、発作は消失せず、根本治療とはなりません。SSRI等の抗うつ薬による薬物療法だけがパニック障害では唯一の根本治療となります。通常2~3ヶ月で発作はコントロールされるようになります。

02発作が消失した状態が続くと予期不安も次第に軽減していきます。

03予期不安が弱まったら、次は広場恐怖の治療へと移行します。外出恐怖、乗り物恐怖などの克服には、行動療法が不可欠です。

広場恐怖に対する行動療法(暴露療法)

不安階層表を患者さんに作ってもらいます。
不安階層表とは、不安の程度が小さい場面から大きい場面を順次並べたもので、表ができたら、患者さんに不安の小さい場面から順次段階的にチャレンジしてもらいます。
気をつけなければいけないことは、チャレンジをする場合、絶対にパニック発作は起きてはいけないということです。自信をつけるのが目的の行動療法なのにチャレンジの最中に発作が起きてしまったら元の木阿弥になってしまいます。私の場合、チャレンジ開始時はなるべく、患者さんに頓用の抗不安薬をお守り代わりに持参してもらっています。不安の少ない最高のコンディションで広場恐怖に立ち向かってもらいたいからです。

発作なしの成功体験の積み重ねを脳にインプットすることで広場恐怖は次第に軽くなっていきます。

治療前電車に乗ること

パニック発作が起こる恐ろしい場所である。

治療後電車に乗ること

何も起こらない安全な場所である。

服薬継続の期間

パニック発作を完全にコントロールした状態が2年続けば、80パーセント以上の人は発作の再発がないようです。逆に1年で服薬を中断した場合60パーセントの人に発作の再発があるようです。
発作を完全に消してしまうためには2年程度の維持療法の期間が必要と思われます。 早期の治療終結は、発作の再発を招き、慢性長期化の原因となっていきます。
薬によって発作を起こさない状態が続けば続くほど、発作への閾値が下がっていき、発作は起こりにくくなるのです。パニック発作を可能な限り止めてしまうこと、それが本質的なパニック障害の治療となるのです。

パニック発作を誘発しやすいもの

タバコ コーヒーなどのカフェイン類 夜更かし コーラなどの炭酸飲料

二酸化炭素によりパニック発作が誘発されます。
発作時に過呼吸発作と間違えて紙袋を吸ったりするとパニック発作が増強してしまうことがあります。

パニック障害の薬物療法のポイント

脳内のセロトニン量が不安定になることで、パニック発作の閾値が下がると思われますので、脳内のセロトニンを回復させるSSRIは、パニック障害の治療薬として理想的な薬といえます。
ただ、パニック障害に罹患すると身体内の小さな変化にも非常に敏感になっているので、異物である薬剤をパニック障害の患者さんに投与する場合には、細心の注意が必要です。 薬剤の副作用を起こしてしまうと薬剤恐怖が新たに出現する恐れがあるからです。 SSRIを処方する際は、最少量から始めて、副作用がなるべく出ないように注意を払ってください。 薬剤を減らす際も急激に減らすと、SSRIでは、中断症候群が出現しやすいので、減量もゆっくりと体が気づかないスピードで漸減していくことがポイントとなります。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)

パキシル

パニック障害の治療成績が一番優れていますが、副作用が出やすい薬なので増やしたり、減らすときは、細心の注意が必要です。特に急に減らすと不快な副作用が高率に出るので、かなり時間をかけて減量していくことがポイントです。至適用量は、男性で30mg、女性で20~30mgぐらいです。10mgでも改善してしまう人がいるので、急には増やさずに様子をみることも必要です。
副作用には、吐き気、眠気、不眠などがあります。

デプロメール(ルボックス)

パキシルに比べて、副作用が少なく使いやすい薬です。パニック障害にも90パーセントくらいの確率で効果があります。至適用量は100mgくらいで効果が出る場合が多いです。

ジェイゾロフト

デプロメール同様、副作用は少ないですが、日本での使用実績が少ないため、現在データを集めているところです。
特徴として、前2者の薬と比較して、効果発現が早い(10日間くらい)のと、抗うつ効果が強いということがあげられると思います。抑うつ症状を合併したパニック障害のケースには使いやすいと思われます。至適用量は、75mgくらいではないかと思われます。

最後に

パニック発作とそれに伴う恐怖感は、言葉にならないほど恐ろしい体験です。
パニック発作を経験した患者さんは、心的トラウマを有しているわけですから、治療関係を築くには、患者様が抱えている不安や恐怖感を治療者がいったん受け止めることが重要です。
またパニック障害に罹患すると身体の変化に異常に敏感になります。予期不安が強い時期は、身体的症状を訴えることも多いのですが、そういった訴えに対して傾聴する姿勢が大切になります。

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